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日本細見紀行 

日本各地の旅日記
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五條をめぐる2本の映画。『萌の朱雀』と『ひと夏のファンタジア』

2016年7月14日

 ヒロインは尾野真千子だった。

 そのことに気が付いたのは女優の経歴を見たときだった。もう何年も前のことである。経歴の一行目に映画『萌の朱雀』があった。だから『萌の朱雀』を思い出したのは尾野真千子がきっかけということになる。

 ヒロインが誰でもよい映画だった。私にとってはそうだったということである。だから気にも留めずに観ていたのだろう。

 この女優は誰なのだろうと観ている途中から気になって、見逃すまいとエンドロールに注視したのとは対照的である。沢尻エリカという名前がヒロインであることを見つけたときはほっとした。その顔がとくにアップされていたわけではなかった。監督の井筒和幸はそういう演出をしなかった。しかし存在感は圧倒的でとにかく輝いていた。沢尻エリカ抜きで映画はヒットしなかっただろう。それは作品として映画が主張したいこととは関係のないことである。ずっとあとになって別の映画の試写会で「別に・・」と言って干されたときも、いかがわしそうなメディアプロデューサーと結婚しスペインにわけのわからない会社を設立したしたときも、ドラマ『ファーストクラス』(フジテレビ)のあとCM以外でのメディアへの露出がなくなってからも、沢尻エリカへの関心は薄れなかった。『パッチギ!』はそういう映画である。ここでも、私にとっては、と書いておこう。

 2、3年前、友人と飲んだとき、『萌の朱雀』の話になった。映画は、坂本線(五新鉄道=奈良県五條市と和歌山県新宮市を結ぶ未成線の鉄道)が開通しなくなり、村がそのあとどうなっていくのかというものだった。そういうストーリーだったということを友人は話した。『萌の朱雀』を観ていたはずの私はそういうことを忘れていた。すっかり抜け落ちてしまっていた。これが『萌の朱雀』を思い出した2回目である。

 2015年9月に東北地方太平洋沿岸部の東日本大震災の被災地域を旅したとき、釜石にある2本のBRT(バス・ラピッド・トランジット=バス高速輸送システム)に乗った。このとき五新鉄道のことを思い出した。未成線となった五新鉄道跡はバス専用道路として整備され、大阪からのバスが十津川村まで走っている。五新鉄道跡はなぜかBRTとして定義されていない。やや間接的であるが、このときも『萌の朱雀』を思い出した。3回目である。

 4回目は2016年7月12日だった。2日前である。たまたまネット上で、映画『ひと夏のファンタジア』を知った。監督はチャン・ゴンジェという韓国人である。

 韓国では公開1週間で1万人、公開1ヶ月で3万人を超える観客を動員し、インディーズ映画としては異例の大ヒットを記録したらしい。

 映画の舞台は奈良県五條市である。一気にサイトに引き付けられた。次の一文があった。

 「チャン・ゴンジェ監督は、是枝裕和、ホン・サンスにつながるアジアの期待の星だ!」 ―LabuzaMovies.com
 
 単なる宣伝文句である。いつもなら無視してしまうところだが、是枝裕和の名前が出てきたのではそうはいかなくなった。『誰も知らない』『そして父になる』を撮った監督である。評価は『海街diary』で固まったといっていい。第39回日本アカデミー賞は『ソロモンの偽証/前篇・事件、後篇・裁判』や『駆込み女と駆出し男』を差し置いて『海街diary』が受賞した。世間では『海街diary』が本命であるといわれていたので、「差し置いて」というのは私の主観である。

 日本アカデミー賞はおもしろくない、ブルーリボン賞のほうが先鋭的な作品を評価する、という考えはまた強化された。

 しかし『海街diary』はよい映画である。江ノ島をほとんど映さず、夜の相模湾に映った色だけで花火を表現した(このこととは別に、日本の夏を表現するのに安易に花火を使うなと思っている。『ひと夏のファンタジア』でも花火が出てきた)。監督は長澤まさみをうまく使いこなし、綾瀬はるかは『駆込み女と駆出し男』のじょご役の戸田恵梨香とは異なる、生活のなかの人の強さを表現した。相模湾が東北の太平洋沿岸部とつながっていることをかすかに感じさせた。

 予想したとおりアイドル口調が抜けない広瀬すずは鼻についた。フットボールのワン・シーンで、川澄奈穂美ほどにドリブルがうまかったことを評価するが、17歳に過剰な期待をしてはいけない。昨年が17歳であったと知ったのは、第24回参議院選挙の前に有権者になっていたことをテレビが伝えたからである。

 『海街diary』の完成度は高かった。ひとつひとつのシーンが現実の生活の営みから抽出されたもので、それが心に貼り付いてきた。

 『ひと夏のファンタジア』のプロデューサー欄にまさかの河瀨直美の名前があった。欧州映画界で北野武の次に有名なのはおそらく『萌の朱雀』の監督であることを日本人は知っておいたほうがいい。北野武はテレビ界の寵児であるが、河瀨直美はそうではないというだけのことである。だからおそらく河瀨直美の『萌の朱雀』は北野武の『あの夏、いちばん静かな海』と同じところに位置付けられる。河瀨直美はまだ47歳である。

 河瀨直美を紹介しておく。『萌の朱雀』でカンヌ映画祭新人監督賞にあたるカメラドールを最年少で受賞し、2007年『殯(もがり)の森』ではグランプリを受賞した。それだけではない、内外の20ほどの映画賞を受賞している。映画賞を総ナメにしてきた。2016年、第69回カンヌ国際映画祭の短編コンペティション部門と、学生作品を対象としたシネフォンダシオン部門の2部門の審査委員長に就任した。審査委員ではなく審査「委員長」である。


 『ひと夏のファンタジア』のHPに河瀨直美のコメントが載っていた。全文を引用する。

 『ひと夏のファンタジア』はタイトルが示す通り、少しの瞬間を共有する人々たちの真夏のある1日を描いています。各キャラクターが持っている記憶、場所、大切な思い出が、物理的な時間と場所を越えて絶妙な調和をなしています。これは、隣国である韓国と日本が、過去、現在、未来を、どのように受け継いで行くのか、考えてみるヒントをくれていると思います。
 皆さんそれぞれが、この映画を通して、どこからきたのか、今、どこに立っていて、これからどこに進んで行くのかを考えてみる機会になればいいと思います。


 映画のストーリーもサイトから引用しておく。

 第1章
 韓国から奈良県五條市にシナリオ・ハンティングにやってきた映画監督のテフン。彼は日本語を話す助手のミジョンと共に、観光課の職員タケダの案内で町を訪ね歩く。古い喫茶店、廃校、一人暮らしの老人の家……インタビューを通し、寂れゆく町にも人々の営みを感じたテフンは、旅の最後の夜に不思議な夢を見る。目覚めたとき、窓の外には花火があがっていた…。

 第2章
 韓国から奈良にやってきた若い女性ヘジョン。彼女は五條市の観光案内所で知り合った柿農家の青年ユウスケと共に、古い町を歩き始める。ユウスケは徐々に彼女に惹かれるようになり…。


 主な出演は
 
 キム・セビョク  岩瀬 亮  イム・ヒョングク  康 すおん

 4人のなかに知っている名前はなかったが、康すおんに注目したい。二階堂ふみが主演した『美園ユニバース』に出演していた。『美園ユニバース』の監督は『リンダリンダリンダ』を撮った山下敦弘である。『リンダリンダリンダ』は2005年の日本アカデミー賞からもブルーリボン賞からも外された。

 2005年は、西岸良平の漫画『三丁目の夕日』をなぞっただけの、稀にみる予定調和的映画である『ALWAYS 三丁目の夕日』が日本アカデミー賞を受賞した。ストーリーは別仕立てであったとしても、原作の雰囲気の再現だけは天下一品であった。建設途中の東京タワーのCGはそれを手助けしていた。映画の独自性を軽んじた受賞だった。同年のブルーリボン賞が『パッチギ!』であったことは救いである。

 美園ユニバースは2011年に閉鎖された千日前(大阪)のキャバレーである(現・貸しホール)。近くにユニバース横丁がある。

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 7月13日時点で『ひと夏のファンタジア』の上映館は全国で2館しかなかった。少し前に大阪と名古屋でも上映されてようだが、「ユーロスペース」(渋谷)と「横浜シネマリン」しかかなった。

 7月に映画館に行けない人は8月6日以降に高崎(群馬県)に行くこともできる。高崎を歩くよい機会になるだろう。8月6日は青春18きっぷが使えるだけではない。北海道&東日本パスもある。「シネマテークたかさき」で上映されるのは、第30回高崎映画祭で『ひと夏のファンタジア』が上映されたこととも関係があるのだろう。

 余談であるが、『リンダリンダリンダ』のロケ地は高崎と前橋である。 

 多くのことがつながってしまった。

 『ひと夏のファンタジア』を観にいかないわけにはいかなくなった。

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 2016年7月13日、横浜シネマリンで『ひと夏のファンタジア』を観てきた。
 
 公式発表されているストーリーは前述したので、感想を詳しく書くのは止める。よい映画だった。ものすごく感動したというところまではいかなかったが、悪くはない。
 
 映画のなかで篠原という地名が登場した。行ったことがなかったが、五條の山のなからしい。山のなかの一軒家が映しだされていた。縁側からぼんやりと灰緑の山を眺めているというシーンがあった。そのシーンは『萌の朱雀』と酷似していたというより、『萌の朱雀』そのものだった。
 
 旅の映画として秀逸である。夏は日本の田舎がいい、と思ったくらいだ。
 
 五條市としては最高のPRになっただろう。五條(奈良県)を知らない人はぜひ五條に。周辺にもいいところはいくつもある。五條があってこその『ひと夏のファンタジア』であるといっても許される範囲内でのオマージュになるだろう。


2016年7月13日の横浜シネマリン

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2016年3月21日の美園ユニバースと千日前(大阪)

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2014年1月5日の高崎

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2011年8月12日の五条駅

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2006年12月31日に歩いた五條

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 『ひと夏のファンタジア』のエピソードを記しておく。

 チャン監督「五條に行った韓国の女性たちが、『やっぱりユウスケは居なかった』とSNSに書き込むんですよ(笑)。

 『萌の朱雀』のエピソードも記しておく。 

 河瀨直美は『萌の朱雀』のロケハンのために奈良県西吉野村(現・五條市)を訪れた。そのとき、たまたま学校で下駄箱を掃除している女子生徒に声を掛けた。

 そしてヒロインは誕生した。女子生徒は女優・尾野真千子になった。
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Comment

奈良編に期待
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お待ちしておりました
奈良は奥が深そうで、関東者には主要観光地以外は馴染みがありません
知らない世界を教えてください
尾野真千子は芸達者なので大好きな役者さんです
もし今、朝ドラのカーネーションを放送したら30%級の視聴率と思います
2016年07月20日(Wed) 22:59
No title
編集
Maxさん、お久しぶりです。

関東の人が奈良に行く場合、やはり奈良近辺になりますね。奈良にホテルがない、夜に食べるところがないとかで大阪に宿泊する人が多いようです。この旅環境では、奈良に腰を据えてじっくり見てみようという気にならないかもしれません。いいところは一杯あるのですが。

関東から五條に行く人はまずいないです。

今日、尾野真千子のドラマをやってました。よかったです。

申し訳ないのですが、奈良編は今回の読み切りになります(笑) また機会があれば書きます。日本細見紀行を久しぶりにアップしたのですが、最近はほとんど毎日1本「よこみち うらみち 街探検隊」に記事をアップしています。

よろしければぜひ。
2016年07月21日(Thu) 23:07
今、読みました。
編集
7月後半は忙しかったからなあ~

この映画の話題は新聞かどこかで目にしていたはずなのですが、見逃してしまいました。五條に韓国人観光客が押し寄せているのでしょうか? 古い喫茶店が気になるなあ。

尾野真千子さんは私と同じような環境で生まれ育った女優として親しみを感じています。ウチよりはマシだけど結構な山の中です。篠原は旧大塔村のかなり辺鄙な集落ですが、私も近くまでしか行ったことがないです。まあ、普通行かないですけどね。

商励会のアーケードは撤去されました。大黒湯は廃業し建物もなくなりました。私が子供の頃からあった駅前のバス待合室もなくなったそうです(JRの駅は五条駅でバス停は五條駅前)。五條の衰退ぶりを見ていると橋本が大都会に思えます(笑)。
2016年08月26日(Fri) 01:29
No title
編集
にしださん。

五條に始まり五條で終わった映画でした。普通、この種の映画はもうちょっと広域を扱うものです。2月に観た「縁」(佐々木希主演)は出雲から松江までを扱っていました。「ひと夏」は五條と心中した映画です。お金はかかっていません。演出はほとんどなく、ドキュメンタリー風でもあります。取材をそのまま映画に活用したような超低予算映画です。

五條の中心は全部映ってました。餅商一ツ橋は2回ほど登場しました。新町通りは何度も。もちろん駅も。観光案内所は10分くらい映ってました。

廃校も映っていました。「萌」に出てきましたっけ。

古い喫茶店、気になりますよね。エンドロールを食い入るように見ましたが、もちろんわかるはずもありません。

都心でも銭湯は廃業が多いのに(最近はそうでもないようですけど)、大黒湯はよく生き残ったほうがと思います。

橋本は南海高野線がありますから。御所か吉野口のどちらかの線が五條まで延びてきていれば、ちがったかも。

縁側から山を見るという「萌」と同じシーンがあったのは、わざとそうしたと思います。「萌」と同じ場所かどうかはわかりませんが。

にしださんのFBの写真、「萌」そのものですよ 笑
2016年08月26日(Fri) 10:27












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